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"Flying Faster" (中級者向け)

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harasky
(@harasky)
投稿: 135
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Topic starter
 

速くタスクを飛ぶには、何かが足りないと感じる中級の方々向けになりますが、

競技飛行全般について速く飛ぶための効率的なフライトの重要性を説いた講演の動画を紹介します。

(但ししっかり1時間あります)

https://chessintheair.com/flying-faster/

最後の数分だけノイズが乗ってしまってますが、聞くだけなら何とかなると思います。

上記ページ下のほうに要点がまとまっています。

カメラアングルが残念ですが、Youtube動画ページの詳細欄からGoogleドライブへのリンクがありレジュメ(スライドのファイル)が入手できます。

他、同じ日にあったであろう他の講演分のレジュメや参考文献も一緒に入手できます。

(なんとパワーポイント形式だったので、ここにPDF変換したものを置いておきます)

 

 

以下蛇足

この動画見つけたきっかけが、過日紹介した「Just a little faster, please」の元文章、付随する参考文献を入手できないか探してたところ、この動画のレジュメ一式の中から入手できたという経緯で、この動画にたどり着きました。

This topic was modified 4か月前 by harasky

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投稿済 : 04/06/2024 5:15 am
Naoki_NT3
(@naoki_nt3)
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メンバー Admin
 

Haraskyさん、いつも有益な情報ありがとうございます。先に投稿いただいた情報を元に私もこちらの動画にたどり着いていました。これ、結構有益だと思ったので日本語要約を作ろうとしていました。後ほど整理してアップしますのでお任せ下さい。

取り急ぎ、先のPPT資料を印刷しやすいようにOutlineを書き出して図表を加えたものをWordにしました。よろしかったらこちらもどうぞ。

なお、英文での要約は既に以下のサイトにでてました。これから作る要約の元ネタです。

https://chessintheair.com/flying-faster/

 

 Naoki_NT3

 

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投稿済 : 04/06/2024 10:49 am
harasky reacted
harasky
(@harasky)
投稿: 135
メンバー
Topic starter
 

@naoki_nt3 是非、よろしくお願いします。

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投稿済 : 04/06/2024 7:27 pm
Naoki_NT3
(@naoki_nt3)
投稿: 312
メンバー Admin
 

 皆さま、遅くなりましたがFlying Fasterを私自身の解釈でまとめてみました。Haraskyさん紹介の動画や資料を元に私のCondorの経験を加えての解釈ですがレースで跳ぶ時の参考になれば幸いです。PDFに落としたものを最後に添付していますのでお手元に置いておきたい方はどうぞ。


Speed to Fly: より速く飛ぶために

 Speed to Flyという言葉はグライダー等の滑空スポーツにおいてサーマル間をどのような速度で飛行するとタスクスピードを速くできるかという概念を表しています。歴史的にはマクレディー氏の考案した理論に基づいてサーマル間の最適速度を求めることから始まっているのですが、現在ではレースで速く飛ぶための戦略や安全にXCフライトをするための考え方へと広義の概念に発展してきています。

 以下は20192月にAeroClub Albatrossで行われたJohn Good氏の「Flying Faster」というプレゼンテーションを元に編者の私見を踏まえて整理したものです。なお、編者はグライダー自家用免許を取得しているものの現在ではグライダーシムのCondorでのフライトがほとんどであり、そのフライトシム経験に基づいて本資料をまとめているので、現実のグライダーの飛行においてはさらに多くの条件を考慮する必要がある事に留意下さい。

 また、本文ではプレゼンテーションにあった理論的な説明は省略していて、読者は既にMC値に基づく速度でグライダーフライトが出来るものとして説明を進めています。MacCreadyMC)理論については数式まで理解する必要はありませんが、基本的な考え方とフライト中のMC速度の求め方について本文を読む前に理解しておいて下さい。Good氏のプレゼンテーションは主にJohn Cochrane氏の解析に基づいています。Cochrane氏は経済学者であり全国大会での優勝経験もあるグライダーパイロットで、数学的な計算からSpeed to Flyへの理論付けをしています。さらに詳しく理解したい方は巻末にしるした関連資料を参照下さい。

(2024.7.7 武市直己)

1.上級者はなぜ早く飛べるのか

 サーマリング中の最適なバンク角度は40〜45°、それに加えて上級者は実機における尻バリオなどから上昇風を感じ取る力が強いといえるが、同じサーマルを回っている時の上昇率は他のパイロットと大きくは変わらない。

 タスクスピードの差は、単純に平均上昇率の差によるものではなく、タスク中の多くの選択の機会に上級者は他のパイロットよりも少し良い選択を繰り返し行うことで最終的に大きくタスク時間を短くしているということであり、最も大きな時間短縮の要因はサーマル等による高度獲得から次の高度獲得までの巡航をより効率的に飛んでいるということである。

 なお、上級者との平均上昇率の差がどこから出来てくるかというと、上級者は適切かつ必要なサーマルのみで回っているという事である。つまり設定したMC値を下回る上昇率のリフトからはすぐに離脱し、強いサーマルだけで旋回しているということを示している。

2.マクレディー(MC)値の設定の仕方

 ここで巡航時の速度を決めるためにマクレディー理論が登場する。

 マクレディー理論の提唱者のPaul MacCready氏(多くの人が綴りを間違え、発音としてはマクリーディ)によると、次に回るサーマルの平均上昇率をMC値として設定し、そこから計算された速度で巡航すると巡航時の時間と次のサーマルで高度獲得する時間の合計が最適化されるとしている。

 さらに、John Cochrane氏はこれを発展させ、タスク中に高度獲得のためにサーマル旋回をして留まるべき最低上昇率をMC値とし、それに基づくMC速度をサーマル間の巡航速度とするとしている。パイロットはこのMC値を下回る上昇率のリフトの場合は速やかに離脱し、MC値を上回る時だけ旋回して高度を獲得するというタスク攻略戦略である。また、同氏は高度が低くなってきた場合は高度の低下に合わせてこのMC値は下げていくべきであり、逆に高度が高い場合はMC値を上げていくということも提唱している。つまり、高度が低くなってサバイバルモードに入ってきた場合には当然弱いサーマルでも回る事になるし、逆に高度が高い時はよほど上昇率が高いサーマルでない限り巡航を止めて旋回すべきではないということである。

3.サーマル間の速度

 さて、マクレディー理論による速度設定を行った場合は、理論上はタスク達成のために要するサーマル旋回の時間はタスク時間の37%となるが、現実には上級者はタスク全体の20〜25%だけを旋回時間に使って回ってくる。

 これは上級者は正しく次のサーマルに向かえているということである。上級者には前方に多くの積雲や地形が見えており、そのなかから適切な経路・目標を選ぶ事が出来ている。さらに、最小限の迂回で幾つかの積雲の下を飛ぶ事で上昇すべきサーマルを選択する余裕も出来ている。

 ところで、巡航中の速度についてはMC速度が基準であるが、それより速くても遅くても速度の違いはそれほど大きく高度損失に響かない。そのためスピードバリオに追随する事に腐心するよりも地形や積雲のラインを見る事でHigh-energy/low-lossな経路を考えて飛ぶことが大切である。ただし、沈下帯に遭遇した時には速度を上げて速やかに沈下帯を離れなくてはいけない。

 では、巡航中に強いリフトに遭遇した場合はどうするか。先にも述べたように速度の大小は効率に大きく影響しないので上昇率の変化が小さい場合は都度スピードバリオの指示を追いかける必要はない。一方、ドルフィンで急激なプルアップをすると大きな高度獲得が期待出来るが、その後サーマルを抜けた後にやってくる沈下に入ってから増速するような事態に陥ると加速時の高度損失も大きくなり先の高度獲得が無意味なものとなってしまう。さらに急激なプルアップをした場合はタスク速度に対して大きな抵抗となる事を考えると、強いリフトがあったとしてもプルアップは小さく押さえたほうが良い。どれだけプルアップをすればよいかということについては諸説あるが、Condorでフルバラストの場合に巡航時のドルフィンで速度を抜いてもせいぜい150km/hまでという人や、巡航速度から20km/hマイナスまでという人もいる。編者は同一フラップ速度内でのプルアップに留まり早めに増速してプラスのうちに巡航速度に戻す事を目標としている。CondorではPDAのファイナルグライド画面を表示させてDDHの変化を見ると、プルアップが成功したか失敗したか分かる。リフトを越えた後にDDHの値が増加していなければそのプルアップは失敗でタイムロスにしかならなかったということである。

 上級者はこれらの選択を繰り返す事でサーマル間の巡航中の高度損失を少なくしながら飛んでおり、結果としてサーマルを使う回数が少なくてすんでいる。

4.風向とMC速度

 グライダーはAir Massの中を飛んでいるので飛行効率だけを考えると風上に向かっている時も風下に向かっている時も同じMC値の設定、MC速度での滑空で問題ない。

 しかし、一般にTPを回る時には、風上のTPに向かっている時はやや低くても良いが、風下のTPを回る時には出来るだけ高い高度で回るほうが良いといわれている。これは風上のTPを回った後は風下への巡航となるのでサーマル探索距離に余裕がもてるが、風下のTPを回る時にはその逆となるのでできるだけ手前のサーマルで高度を獲得しておいたほうが良いという考え方である。

 一方、John Cochrane氏は異なる見方をしていて、「take upwind turnpoints fast and choosey, and take downwind turnpoints slow and patient」という考え方をしている。風上TPに向かうときには設定したMC値より幾分高い上昇率の時だけ旋回するようにしつつ、速度はMC速度より増速することで早くTPを回る事を目指す。一方、風下TPに向かう時には設定したMC値よりも低いサーマルで旋回しても良いとし、速度もより遅くする事が出来るという考え方である。

 何れにせよ、TPを回る時にはタスクライン上の地形や積雲の状況を観察し、風向風速や折り返し後のサーマル探索をどうするかを十分考慮した上でサーマル離脱のタイミングを計る必要がある。

5.バラスト

 MC値を2 m/s以上に設定するような状況ならフルバラストでよい。

 バラストの効果としてはより重量が大きいと同じ高度ではより大きなエネルギーを持つことになりタスク速度に有利に働くが、逆に高度を獲得するためにはより大きなエネルギーを獲得しなくてはいけないということを意識しなくてはならない。

 具体的にはバラストを積む事でマクレディー理論による最良滑空角が良くなり、同じ高度を使ってもより遠くまで飛べるようになる他、この最良滑空角をより早い巡航速度で達成する事が出来ることからタスク速度の向上も図れるのである。さらに、バラストがあるとサーマルに入った時のプルアップ時の高度獲得も大きくなるという効果もある。

 一方、サーマル旋回時にはバラストを積んでいることで上昇率が低くなり同じ高度を獲得するのにバラストがない時よりもサーマリング時間が長くなる。そのため、サーマル間を巡航する際には適切なエナジーラインを選び、沈下の少ないところを飛んで行くように努力しなくてはならない。

 また、バラストを積んでいると旋回時に増速する必要があり旋回半径が大きくなる。そのため、その日のサーマルの状況によっては上昇率が大きく低下したり、場合によっては旋回半径が大きすぎる事でサーマルの中に留まる事が出来なくなることも考えられる。

 バラスト量を決めるにはこれらの条件を考えその日のサーマルの状況に応じた適当な量にしなくてはならない。

 とはいえ、レースのスタート時にフルバラストでいる事は十分なメリットがあることは留意すべきである。レースにおいてスタート前に高度獲得する時間はタスク時間に含まれない。そのため時間はかかったとしても適当な時刻までに必要高度を獲得できるような条件であれば、離陸時にはフルバラストでスタートし、タスクスタート後の最初のサーマル旋回でバラスト量を調整すればバラスト搭載効果を最大限使う事が出来る。スタートの最高高度は雲底高度に比べて大きく低いのでスタート直後はサーマル探索に使える高度が小さく余裕がないが、バラストを積む事で最初のグライドを長くする事ができスタート時のサーマル探索距離を最大にする事が出来る。また、スタートラインを越えた時と最初のサーマルに入る時のプルアップ時にはバラストを積んでいない時よりも大きな高度獲得をすることが出来る。

 その他、ファイナルグライドにおいてはバラストを積んでいる事が圧倒的に優位に働くことや、強い向かい風の時にバラストが有効である事も考慮しながらバラスト量を検討していくことになる。

6.ファイナルグライド

 ファイナルグライドにおける留意点として、

・設定したMC値よりも弱いサーマルでファイナルグライドに必要な高度を獲得しようと思わないこと。

・ゴールに向けて直線的に飛ぶことよりも少し迂回することになってもエナジーラインを維持しながら飛ぶこと。

・うまく飛んでいればゴールに向かう間に高度に余裕が出来てくる場合があるが、その際にはそれに合わせてMC値を増やして行くこと。

・途中で高度を失ってしまった場合には低すぎてしまわないうちに高度獲得をすること。なぜなら高度が低くなるとどんどんリフトを見つける事が難しくなり同時にリフトも弱くなるから。

 John Cochrane氏はファイナルグライドに対して「Start final glide aggressively, end final glide conservatively」(スタートは果敢に、終盤は控えめに)という考え方をしている。つまり、残り少しの高度が欲しくて弱いサーマルで回るのではなく思い切ってスタートし、エナジーラインや沈下の弱いところを進んで様子を見ながら進むほうが良いということである。ただし、どこまで攻めの姿勢を取るのかは見極めながら進み、後半は余裕がなくなる前にリフトで上昇するかMC値を少なくするのか早めに修正することが必要である。また、条件が悪い時は安全側にシフトして考えなくてはいけない。

 なお、ファイナルグライドに関して勘違いしてはいけないのは、距離のあるところでMC値0でゴールにたどり着ける高度になったと思いファイナルグライドに入るのは危険であるということである。MC値0では高度に余裕が全くないので途中で不時着するリスクが非常に高い。

 AATにおいて最後のターンをどこでするかは難しいところ。もちろん時間ちょうどでゴールするのが最も効率が良いが、グライドコンピューターの指示に基づいてターンしてファイナルグライドに入ると時間よりも早くゴールしてしまうことが多い。これはグライドコンピューターではファイナルグライドの経路上の状況はすべて静穏な条件として計算しているので、最後のターン後にうまくエナジーライン上を進む事が出来た場合は時間よりも早くゴールしてしまうからである。

7.リッジの飛び方

 リッジではサーマルとは逆の飛び方になり、リフトでは増速し、沈下では減速して稜線の上を進んで行く。稜線から下りてしまうと大きな遅れとなるので、稜線上を維持できない場合はサーマルの飛び方(リフトでは遅く、シンクでは早く)に切り替える。

 飛んでいるリッジから別のリッジへと移動する場合は、常にファイナルグライドと同じ考え方をする。目的のリッジに到達するための必要な高度マージンは地形や風向風速も考慮して決めなくてはいけない。

 

(参考資料)

  上記サイトにある資料のうちSpeed to Flyに関係する資料の直リンク

 

↓こちらは上記解説をPDFにまとめたものです。

(以上) 

 Naoki_NT3

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投稿済 : 07/07/2024 8:21 pm
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